遺言で出来ること
遺言書に書いた内容すべてに法的な効力が生じるというわけではありません。「家族全員仲良く暮らしなさい」、「先祖の供養をしなさい」と書いた場合、遺言者の最期のことばとして尊重されるべきでしょうが、道義的な意味にとどまります。
遺言で法的効力が生じる事項として、主に次のことがあげられます。
相続分の指定
各相続人の遺産の相続分を指定することができます。相続分を指定したときは、法定相続分に優先します。また、相続分の指定を第三者に委託することもできます
遺産分割方法の指定
「自宅の土地と建物は長男に、預貯金は次男に」などを物件ごとに相続人を指定することができます。このように具体的に誰が何を相続するかということを指定しておけば、もめごとを避けることができます。
また、分割すると経済的な価値を大きく失ってしまう不動産などは、相続開始後5年間を限度に分割の禁止を指定することもできます。
遺贈
相続人以外の人に対しても、財産の贈与ができます。
子の認知
婚姻外でできた子供を認知して、相続人の資格を与えることもできます。
未成年者の後見人の指定
遺言者の子が未成年の場合は、誰を後見人にするか指定できます。また、後見監督人(後見人を監督する者)を指定することもできます。
相続人の廃除
相続人の権利がある人が遺言者に生前虐待や侮辱をしたり、その人の素行が著しく悪いなどの理由で財産を相続させたくないとき、その人を相続から廃除することができます。
また逆に、一度相続人から廃除した事実を取り消すこともできます。
遺言執行者の指定
遺言を執行させるため、弁護士や行政書士などの法律の専門家を遺言執行者に指定することができます。またその執行者の指定を第三者に委託することができます。
祭祀承継者の指定
墓地や仏壇などの承継者を指定することができます。これは生前に指定しておくことも可能です。また祭祀承継者に指定された人は葬儀の喪主となります。
遺留分の減殺方法の指定
遺言によって侵害された遺留分を、法定相続人が減殺(戻してもらうこと)を求める際に、どの財産から減殺していくのか、その順番と割合を指定することができます。
寄付行為
社会事業などに財産の一部を寄付するなど、財団法人の設立を目的として財産を提供することができます。
信託の指定
一定目的のために、財産管理やその運用を指定した信託銀行に委託することができます。
相続人相互の担保責任の指定
遺産を分割した際、誰かの受け取った財産に過不足があった場合、不公平を避けるためお互いの損害を担保しあわなければなりません。遺言では民法に定められたものとは違った担保の方法を指定できます。
特別受益分の持ち出しの免除
生前に贈与した財産を特別受益分といい、遺産分割の際、相続分に加算されることになっています。しかし遺言によってその持ち出しを免除することができます。
遺言で出来ないこと
遺言書を残すということは、遺言者からの一方的な行為ですから、法的な拘束力を持たないものもあります。
結婚・離婚に関すること
結婚や離婚は当事者の合意に基づいて行うことですから、遺言によって書き換えられることはありません。遺言書に「妻と離婚して相続権を与えたくない」と書き記してあっても、法的には無効です。
養子縁組に関すること
養子縁組に関しても死亡後、遺言書によって書き換えられることは法的に無効となっています。養子縁組をしていなかったために、わが子同様に育ててきた子供に相続権が与えられない例があります。そうならないためにも生前に養子縁組を執り行っておくことをおすすめします。
養子縁組ができなかった場合、遺言書に遺贈のかたちで書き残しておくことができます。また養子縁組の解消についても遺言書では効力を持ちません。
その他、借金債務の分割指示や遺体解剖や臓器移植に関することも遺言書では法的に拘束力を持ちません。