「相続させる」と「遺贈する」の違い
法定相続人に財産を残す場合を「相続」と呼び、相続人以外の人や団体などに財産を譲る場合を「遺贈」といいます。遺言では、相続人に対しては財産を「相続させる」と書き、相続人以外の人や団体に対しては財産を「遺贈する」と書きます。
しかし、相続人に対して財産を「遺贈する」と書いても、遺言が無効になることはありませんが下記の違いがありますので、気をつけましょう。
不動産の登記手続
「遺贈する」遺言の場合は、遺言執行者がいるときは遺言執行者と遺贈を受ける人が共同で、遺言執行者がいないときは相続人全員と遺贈を受ける人が共同で、所有権の移転登記の申請をすることになります。
一方、「相続させる」遺言の場合は、相続人の単独で申請することができます。
以前は不動産の登記申請のときに支払う登録免許税が、遺贈の場合は相続させる遺言の場合の5倍とされていましたが、現在は同率とされており、この点で有利不利はありません。
農地の取得
「遺贈する」遺言の場合は、包括遺贈の場合を除いて、農地法による知事の許可が必要となります。
一方、「相続させる」遺言の場合は、農地法による知事の許可が不要ですから、許可なく所有権移転登記をすることができます。
借地権・借家権の取得
「遺贈する」遺言の場合は、包括遺贈の場合を除いて、農地法による知事の許可が必要となります。
一方、「相続させる」遺言の場合は、農地法による知事の許可が不要ですから、許可なく所有権移転登記をすることができます。
以上のように、法定相続人に対しては、「相続させる」とした方がメリットがありますので、必ず「相続させる」と記載しましょう。
遺贈の種類
遺贈とは、遺言による財産の無償譲与のことをいい、遺言により財産を与える人を遺贈者、財産を与えられる人を受遺者といいます。
遺贈は相続人以外の方に対して何らかの財産を残したい場合に利用されます。また、相続順位の低い相続人、たとえば、子がいる場合の孫などに財産を残したいというときに遺贈することで、その意思が実現できます。
包括遺贈
遺産の全部若しくは半分といったように、割合を決めて遺産を譲ることを包括遺贈と呼びます。譲る遺産は家であるとか土地であるとかいうように特定されません。
包括遺贈を受けた人は、法定相続人と同じ権利、義務を持つこととなります。
例えば、遺贈の放棄をする場合には、相続の放棄と同様に、3ヶ月以内に家庭裁判所に対して遺贈の放棄の申述書を提出しなければなりません。又、遺贈を受けた遺産に借金があった場合には、その借金を返済する義務を負うこととなります。
特定遺贈
遺産のうち、家であるとか土地であるとかいうように、特定の財産を譲ることを特定遺贈と呼びます。
特定遺贈を受けた人は、いつでも遺贈を放棄することが出来ます。なお、一度遺贈の放棄や承認をした場合には、それを取り消すことは出来ません。
負担付遺贈
負担付遺贈とは、ある一定の負担をしてもらうことを条件に財産を承継させる遺言をいいます。
たとえば、ペットの世話をしてもらうかわりに、一定の財産を与えるときなどにも利用できます。
ただし、負担付遺贈をする場合、あらかじめ、条件について十分に話し合い、受遺者の理解・同意を得た上で遺言することが大切です。