遺言執行者の必要性
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための手続きをする人の事をいいます。通常、遺言執行は相続人が行います。
しかし、相続人間の利益が相反するような遺言の場合には、特定の相続人に執行を行わせる事は難しくなります。感情の対立が生じ、手続きがスムーズにできなかったり、あるいは公正になされない可能性もあります。
そんな場合は、遺言執行者を法定相続人以外から選ぶべきでしょう。
遺言執行者になる為には特定の資格が必要ということはなく、未成年者や破産者を除いて誰でもなることができます。ただ、専門的な知識が必要だったり、かなりの時間を費やすことになることが多いので、行政書士や弁護士などの専門家に依頼すると安心です。
遺言執行者が必ず必要なケース
遺言執行者が必ず必要な場合として①相続人の廃除・廃除の取消し ②子の認知 があります。これらの場合、法定相続人だけでは、公正な遺言執行が期待できないので中立な立場の遺言執行人が必要となります。
上記のケース以外では遺言執行者は必ずしも必要とはしませんが、遺言に書かれていた内容に不満がある相続人がいた場合に、遺産分割を妨害するといったことが見られます。せっかく残した遺言も内容通りに実行されなければ何の意味もありません。
遺言執行者には第三者からの立場として遺言内容を忠実、公平に実行する権限があります。さらに、遺言執行者がいる場合、相続人は相続財産の処分や遺言の執行を妨げる行為をすることができず、これに反して勝手に相続財産を処分した場合は無効になります。
このようなことから、遺言の内容通りに相続を進めるためには、遺言執行者を遺言により選任しておくことが賢明だと言えます。
相続人の廃除・廃除の取消し
遺言により相続人の廃除又は廃除の取消しがあった場合、遺言執行者は、家庭裁判所に相続人の廃除又は、廃除の取消しを求める審判を申立て、これを認める審判があった時は、審判確定後10日以内にその審判書を添付し、戸籍の届出を行う。
認知の届出
遺言により認知がされた場合、遺言執行者は、就職の日から10日以内に遺言書の謄本と資格証明書を添付して、戸籍の届出をしなければなりません。
認知した子が成年の場合は本人の承諾が、胎児の場合は母親の承諾が必要となり、戸籍の届出書にその人に署名捺印してもらう必要があります。
遺言執行者の職務
遺言執行者が最初にしなければならないことは、相続財産の目録を作成し、それを相続人に交付することです。
そして、遺言執行者は相続財産の管理、その他遺言の実行に必要な一切の行為の権限を持ち、相続人といえども遺言執行者の職務を妨害することはできません。正当な相続人といえども単独で相続財産の処分などができなくなります。
また、遺言の執行に関する費用は、相続財産から支払われます。
遺言の執行に関する費用の例
- 遺言書検認申請の費用
- 相続財産目録作成の費用
- 相続財産を管理する費用
- 遺言執行者に対する報酬
- 遺言執行に関連する訴訟費用
遺言執行者の報酬は、遺言で定めることができ、遺言に報酬の定めがない場合には、家庭裁判所が、相続財産の状況やその他の事情を考慮して定めることができるとされています。