尊厳死宣言公正証書(リビング・ウィル)とは?
尊厳死とは、もう、現代の医学では絶対に治らない病に対して、このまま病院で高額な治療費をかけながら無意味に寿命を延ばすよりも、患者自身の意思で延命治療をやめてもらい、自分や家族にも負担をかけないように安らかに人生を終えることを言います。
近年では、もし自分が回復の見込みがない末期状態に陥ったときには、機械に生かされているような情けない状況を回避したい、また、過剰な末期治療による家族への精神的経済的な負担や公的医療保険などに与える社会的な損失を避けたい、という考えを持つ人が増えてきています。
尊厳死の課題
本来、医師としては「どんなことがあっても命を絶やさない」ことを第1の使命と考え、それに基づいて治療するのは当然であると思われます。
しかしながら不治の病で末期になった患者に対してはどのように向き合うのかについては、医師によって対応も仕方が違ってくるようです。それは、延命の中止が治療行為の放棄、場合によっては殺人にあたるとして起訴されてしまう可能性がるからです。
では、終末医療に対し患者自身が決定権を持ち、かつ医師側に安心して尊厳死を受け入れやすくしてもらうためにはどうしたらよいのでしょうか?
尊厳死宣言公正証書の作成
「尊厳死宣言公正証書」とは、嘱託人が自らの考えで尊厳死を望む、すなわち延命措置を差し控え、中止する旨等の宣言をし、公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にする、というものです。
公証人手数料は、執務に要した時間が1時間以内であれば1万1000円です。1時間を超えて2時間以内の場合は2万2000円となります。
治療にあたる医師の立場としては、回復の可能性がゼロかどうか分からない患者の治療をやめてしまうのは医師としての倫理に反すること、どのような形であれ、現に生命を保っている患者に対し、死に直結する措置をとる行為は、殺人罪に問われるおそれがあることなどから、尊厳死宣言公正証書を作成したからといって、必ず尊厳死が実現できるとは限りません。
ただ、尊厳死の普及を目的とする日本尊厳死協会の機関誌「リビング・ウィル」のアンケート結果によれば、「尊厳死宣言公正証書」を示した場合における医師の尊厳死許容率は、平成15年には95.9パーセント、平成16年では95.8パーセントという非常に高い数字になっており、近年の医療現場では尊厳死を容認する方向となってきています。
この「尊厳死宣言公正証書」があれば医師側も訴えられる恐れがなく、尊厳死を許容する可能性が高くなります。
このように、尊厳死を実現し、自分にも家族にも負担をかけることなく安らかに人生の幕を閉じるためには「尊厳死宣言公正証書」は不可欠なのです。