延命治療中止の判例
『尊厳死を求めること』は、最終的には『延命治療の中止』を求めることになります。
延命治療を中止することは、積極的に死に向かわせる『安楽死』とは異なり、自然に死に向かうように『治療を停止』することです。
『自然に』とはいっても、延命措置を停止することによって、人の生命が失われることに変りはありませんので、延命治療を中止することができる厳格な要件が、過去の判例の中で明示されました。
現在、1995年東海大安楽死事件の判例が、無意味な治療の中止行為についての法的解釈のよりどころとなっています。
判例で明示された延命治療中止の要件(尊厳死が叶えられるとき)は下記の2つになります。
①患者が治癒不可能な病気に冒され、回復の見込みもなく死が避けられない末期状態にあること
患者の自己決定権は、死そのものを選ぶ権利や、死ぬ権利を認めたものではなく、死の迎え方、死に至る過程を選択する権利を認めたに過ぎません。早すぎる安易な治療の中止を認めることはできません。
法的根拠はありませんが、担当医を含む2名以上の医師により、現在の医学では不治の状態に陥り既に死期が迫っていると診断された場合など、生命を救助することが避けられず、単に延命を図るだけの措置でしかないときに、初めて、治療の中止が許されます。
②治療行為の中止を求める患者の意思表示が存在し、治療の中止を行う時点で存在すること
患者の明確な意思表示が必要ですので、病状に関する正確な情報を十分に得て、正確に認識した上での意思表示となります。意識がなくなってしまっているときは、推定意思によることが許され、事前の書面(尊厳死宣言公正証書)が必要になります。
しかし、この書面があまりにも昔に書かれたものだったり、内容が漠然としているときは、家族の意思表示で補う必要があります。
治療行為の中止の対象となる措置は、薬物投与、化学療法、人工透析、人工呼吸器、輸血、栄養・水分補給など、疾病を治療するための治療措置及び対症療法である治療措置、さらには生命維持のための治療措置など全てが対象となります。
どのような措置をいつ中止するかは、死期の切迫の程度、当該措置の中止による死期への影響の程度等を考慮して決定されることになります。